研究課題/領域番号 |
11460075
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤川 清三 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (50091492)
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研究分担者 |
船田 良 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (20192734)
竹澤 大輔 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (20281834)
荒川 圭太 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (00241381)
佐野 雄三 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (90226043)
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キーワード | 寒冷環境適応 / 凍結挙動 / 細胞壁 / 深過冷却 / 細胞外凍結 / 低温誘導性蛋白質 / 不凍蛋白質 |
研究概要 |
前年度までに、北方樹木を含め、厚い木化した細胞壁を持つすべての樹木の木部柔細胞は深過冷却により凍結を回避して寒冷環境に適応することを明らかにした。木部柔細胞の深過冷却のメカニズムとして、細胞壁の構造特性が過冷却をもたらすと考えられていた。本研究では、深過冷却する木部柔細胞の細胞壁の構造特性を明らかにするため、細胞壁のマイクロ・キャピラリーのサイズを原形質分離法で測定した。しかし、細胞外凍結する皮層柔細胞と深過冷却する木部柔細胞の間に有意なキャピラリーの大きさの差は認められなかった(田中ら、平成14年度木材学会発表予定)。また、対照的な凍結挙動を取る両細胞ともに、細胞壁は外部の氷晶の侵入を防ぐバリアーとして機能することを明らかにした(Yamada et al, 投稿中)。さらに、プロトプラストを破壊し、細胞内溶物を抽出した木部柔細胞では著しく過冷却能力が減少した(Kuroda et al, 投稿準備中)。これらの結果はいずれも、過冷却が細胞壁の構造特性によるより、むしろプロトプラスト内の物質によることを強く示唆する新規の知見である。前年度、シラカンバの木部において、細胞壁結合蛋白質として同定されたキチナーゼ様蛋白質は蛍光抗体法により木部柔細胞の細胞質により多量に分布することが明らかになった。木部柔細胞の可溶性画分のイムノブロット解析により、冬季特異的にキチナーゼ様蛋白質が蓄積することを明らかにしたとともに、過冷却を促進する不凍蛋白質の候補として、幾つかの蛋白質のN末端アミノ酸配列を明らかにした(春日ら、平成14年度木材学会発表予定)。この他に、樹木の凍結耐性の獲得に重要な役割を果たす低温誘導性遺伝子の解析、および糖質の増加と耐凍性の関係を明らかにした。
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