各種の高結晶性セルロースの無酸素条件での熱分解・炭化挙動を検討した。いずれも320℃〜360℃において急速に分解して結晶が崩壊し800℃まで処理するとほぼ純粋の炭素になる。これを1900℃以上で処理すると黒鉛化し、その中には元のセルロースミクロフィブリルに対応する形状の黒鉛結晶が見られた。しかしセルロースを単独で炭化すると収率が非常に低いため、収率向上のために添加する無機物質を種々探索したところ、セルロースに少量の硫酸を加えて熱分解すると熱分解が200℃程度から始まり、炭化収率が大幅に上がることが分かった。炭化における無機物の添加は活性炭製造の目的ではよく行なわれるが、収率に対する影響を系統的に評価したデータは本研究で初めて得られた。またセルロース繊維に引張過重を掛けて熱処理したときの延伸の程度が、硫酸を加えると大きくなることが分かった。これらの知見を元に、高結晶性セルロースの秩序構造を反映した黒鉛材料を調整する方法を検討しつつある。
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