研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、長期間にわたって信頼性の確保できる木質構造の設計法を確立することにある。木質構造物の部材では、比較的穏和な雰囲気条件下でも、荷重負荷時間の増加に伴って木材の物理的な部分的損傷が累積していくことによって、強度性能が次第に低下する。DOL(Duration of Load、荷重存続期間)とは、このような影響を考慮に入れた許容応力度調整法である。しかし、日本では、温度や湿度等の環境要因の年間変動が、地域によって大きく異なる。そのため、物理的外力のみを指標とした本方式を、全国一律に導入すると、構造の耐力や変形に、地域の環境による差が生じる可能性がある。また、これからの木質構造物設計法の主流になる「限界状態設計法」では、荷重と構造耐力のいずれをも、構造物の使用可能期間に応じた確率変数として取り扱う。しかし、現在のところ、耐力側については、時間経過に伴った経年劣化が明確ではない。そのため、本研究では以下の3項目に関した研究を行った。(1)環境条件の影響を考慮した木質構造へのDOL効果の実験的な解明(2)生物劣化による部材強度低下への影響予測(3)「限界状態設計法」の確立に必要な、構造物強度性能経年変化のシミュレートモデルの作成その結果、DOLおよび生物劣化による部材強度低下の傾向を、確率を考慮した関数モデルによって表現できる可能性が示唆された。環境要因による効果については、収集されたデータから、その影響が無視し得ないものと判断されるが、さらなる解析が必要と考えられる。
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