研究課題
木質空間内部における相対湿度の変動・空気汚染物質の挙動を定量的に把握するために、鳥取市歴史博物館、徳島県立博物館、正倉院、石川県立博物館、東京国立博物館、福島県立博物館、道立帯広美術館などの博物館施設における温湿度環境、および空気環境のモニタリングの実施を計画した。東京国立博物館では平成10、11、12年度に関しては、館内の温湿度環境データのデータベース化を進めており、他の施設においても同様な活動が始まりつつある。現在測定及び解析が進行中ではあるが、木質環境における相対湿度の安定性は他と比較して高いことがあきらかになりつつある。近年木材に変わる材料として製造されているセラミック系調湿ボードなども、木材と比較して遜色ない性能を備えていることが明らかになりつつある。空気環境に関しては大阪府公害監視センターの協力により、有機酸およびアルデヒド類、NOx、SOxなどの平均濃度を定量できるディフュージョンサンプラーの開発が進み、実用的な方法として収蔵庫や展示場などで安全な測定が可能になった。電気的な駆動を伴う装置あるいは液体を使用する装置を長期間収蔵庫内に持ち込むことは、作品への配慮から遠慮されてきた。従って、こうした空間における空気環境の長期的なモニタリングはほとんど存在しないが、ディフュージョンサンプラーの開発によって本研究では新たな知見が得られつつある。中でも有機酸濃度の比較は使用される木材の種類や建築後の経過時間などによって大きく異なるように観察され、今後収蔵施設としての条件を確立するために注目すべき要素である。
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