研究概要 |
1.実験アユ群を10^7CFU/mLのP.plecoglossicida菌液に15分間浸漬し、1,3,6,12,24,48,72時間後に、皮膚、鰓、肝臓、腎臓、膵臓、血液の菌量を定量PCRによって計測した。皮膚と鰓では1〜3時間後から、肝・腎・脾では6時間後から、血液では48時間後から検出された。このことから皮膚と鰓が感染門戸であること、また、検出後は各臓器により多くの菌が存続することからそこに感染病巣が形成されたこと、血液に多量の菌が出現したことから48時間後には敗血症になったことが推察された。 2.P.plecoglossicidaに移入できるGFP遺伝子発現ベクターとしてpSKL01,pSKT03,pSKN04の3つのプラスミッドを開発した。いずれのベクターもP.plecoglossicidaの培地上での発育速度やアユに対する病原性は損なわなかったが、pSKT03がGFP産生能および非選択培地における安定性の点で最も優れていた。浸漬感染実験において、アユの体表に付着する菌体を蛍光顕微鏡下で観察した結果、P.plecoglossicidaは皮膚や鰭の微小な損傷部、すなわちマイクロインジェリーに専ら付着することが明らかとなった。 3.粘液胞子虫Thelohanellus hovorkaiの放線胞子をコイに浸漬感染させ、寄生体の挙動を調べた結果、浸漬15分後には鰓弁内に胞子原形質の侵入が観察されたが、体表ではマイクロインジェリーの有無に拘わらず全く検出されなかった。一方、微胞子虫Glugea plecoglossiの胞子は、ニジマス体表のマイクロインジェリー部に特異的に付着し、上皮下に取り込まれた胞子が極管を弾出して感染を成立させることがわかった。以上の結果、病原寄生虫の感染と魚体表面の損傷度との関係は寄生虫の種類によって異なることがわかった。
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