【ウナギの産卵水温および初期発育過程における生息水温の推定】耳石中心部の酸素同位体比(^<18>O/^<16>Ox1000)はその個体の産卵水温を反映する。本研究は二次イオン質量分析法(SIMS)を用いた同位体局所分析法により耳石中心部の酸素同位体比を調べ、ウナギの産卵水温や初期発育過程における生息水温を明らかにすることを目的とした。伊勢湾で採集された5尾のシラスウナギ(全長53.8〜60.0mm)の耳石を用い、耳石中心の酸素同位体比と孵化後60日以内に相当する耳石部分の値を比較した。耳石中心の酸素同位体比(1.9824〜2.0345)はその周囲の値と有意な差はなく、これよりウナギは孵化後60日までの仔魚の分布水温と同様の水温範囲、すなわち16〜28℃で産卵し、また初期発育過程の仔魚も同様の水温範囲に分布することが示唆された。なお、ウナギの産卵海域の水温の鉛直プロファイルからこの水温は水深50〜250mに当たることがわかった。 【アユの回遊履歴の解明】三重県宮川河口周辺域や祓川で採集されたアユ仔稚魚について耳石の日周輪紋とSr:Ca比を解析して回遊および遡上機構を検討した。川を流下したアユ仔魚は体長20mm(40日齢)までは河口周辺の底層に分布し、その後砕波帯へと移動、体長30mm(40日齢)を越えてから砕波帯と河口とを生息場所として利用しながら分布域を拡大する。また体長45mm(135日齢)以上で河口へと分布場所を移し、遡上に至る。遡上は早生まれの個体から始まり、遡上時の体長や成長率は早期に遡上する個体の方が遅い時期に遡上するものに比べて大きいこと、またこれらは早期に小サイズで河口域に入り、河口域で大きく成長して遡上することがわかった。
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