Edwardsiella tardaの菌種内で共通と考えられる37kDa外膜タンパク質(Omp37Et)の産生に好適な培養条件を同菌EF-1株を用いて調べた。つぎに、血清型が異なる2株EF-1株およびV-1株から精製したOmp37Etでウナギを免疫し、EF-1株生菌で感染試験を行ったところ同等の生存性を示した。さらに、EF-1株から調製したOmp37Etでヒラメを免疫したのち、EF-1株およびV-1株の生菌で感染試験を行ったところ、いずれの場合にも非免疫対照群より高い生残率を示し、血清抗体価・マクロファージの貪食活性も高い値を示したことから、本抗原がヒラメにおいても異なった血清型間で共通の感染防御抗原性を示すことが確認された。本抗原のアミノ酸シーケンスではN末端から14アミノ酸が明らかになり、今後遺伝子組換えワクチンの開発に継続できる可能性が示された。投与法では、ヒラメ由来のE.tarda HH-1株のホルマリン死菌(FKC)を用いて腹腔内注射法、経口投与法および浸漬法によりヒラメを免疫したのち感染試験を行った結果、生残率は注射法、経口投与法、浸漬法の順に高く、血清の菌体凝集価・頭腎マクロファージの貪食率など免疫応答のレベルも同順で高かった。つぎに、経口ワクチンのカプセル化の必要性について、魚の消化管内条件が本菌FKCの抗原性に及ぼす影響を調べた結果、低pH、塩酸、アミラーゼ、ペプシン、トリプシンなどの作用により、菌体表面の凝集抗原性が低下することが確認された。そこで、HH-1株のFKCをワクチン抗原とし、賦型剤に混合して酸耐性コーティング処理した試作カプセルワクチンをヒラメに経口投与して効果を調べたが、カプセル化の効果は認められず、原因としてカプセルからのワクチン抗原の遊離が十分でないことが明らかになった。このことから、本菌の経口ワクチンではやはり抗原を守るカプセルが必要であるが、その調製の条件や剤状はなお検討する必要性が示された。
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