研究課題
基盤研究(B)
平成11年度は、Heterocapsa circularisquama発生海域である広島県江田島湾(6月〜10月)及び非発生海域である広島県因島沖(5月〜10月)において海水、底泥を採取し、H.circularisquama殺藻細菌の探索を行った。その結果、(1)H.circularisquama赤潮の発生、非発生に関わらずH.circularisquama殺藻細菌数は低い値で推移し、本年度は本藻の消長と殺藻細菌数との間に関連性は認められなかった。(2)江田島湾の表層水中からH.circularisquama殺藻細菌を1株分離することに成功した。本株(EHK-1)は、H.circularisquamaを宿主として殺藻する世界で初めての殺藻細菌である。(3)EHK-1は、初期接種密度10^6cells/mlでH.circularisquamaを2時間以内に殺藻する強力な殺藻活性を持つグラム陰性の長桿菌であった。EHK-1の16SrRNA遺伝子の塩基配列のほぼ全長を決定し、分子系統解析によりProteobacteria-ν-subdivisionに属すること、およびこれまで分離された他の赤潮藻の殺藻細菌とは全く異なる系統の細菌であることを明らかにした。(4)EHK-1は、菌体外に分子量3000以下の低分子物質を放出してH.circularisquamaを殺藻する「殺藻物質分泌型」の殺藻作菌であった。来年度は、(1)引き続いて、現場におけるH.circularisquamaと殺藻細菌の関係を解明するために、江田島湾において調査を行う。(2)EHK-1によるH.circularisquamaの殺藻機構を宿主藻類と殺藻細菌の両面から解明する。(3)新たなH.circularisquama殺藻細菌の分離を行い、それら殺藻細菌に特異的DNAマーカーの開発を行う。
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