研究課題/領域番号 |
11460093
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
内藤 靖彦 国立極地研究所, 研究系, 教授 (80017087)
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研究分担者 |
小達 恒夫 国立極地研究所, 研究系, 助教授 (60224250)
上田 宏 北海道大学, 水産学部, 助教授 (00160177)
會田 勝美 東京大学, 農学部, 教授 (50012034)
加藤 明子 国立極地研究所, 研究系, 助手 (80261121)
飯郷 雅之 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (10232109)
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キーワード | サケ / マイクロデータロガー / 回遊行動 / 遊泳加速度 / 遊泳速度 / 遊泳水深 / 浮力調節機構 / 鉛直移動 |
研究概要 |
サケの回遊行動における環境選択、行動適応について基礎的データを得るために三陸沿岸において10月、また日光中禅寺湖において9月にそれぞれマイクロデータロガーの装着実験を行った。三陸沿岸の実験においては、母川回遊中のシロサケ5個体に最新のロガー(UWE-PD2GT)を装着し放流、4個体を回収し、内3個体から、時間、遊泳水深、遊泳速度、遊泳加速度を連続して得ることに成功した。一次解析の結果、サケは潜水時に積極的に行動し遊泳を行っていたが、一定水深到達度は緩やかに潜行した。しかし、浮上時には積極的に遊泳行動し、一定水深到達後緩やかに行動した。このことから、従来から仮説として出されている鰾による自動的浮力調節機構は備わっていないらしいことが判明した。この結果はサケの大きな鉛直移動はコスト的には負担が大きいことを示している。サケは元来極めて表層性の回遊魚であり、大きい鉛直移動を積極的に行わないと考えられ、鉛直移動に適した浮力調節機構は発達していないと思われる。回遊の最終段階のサケが表層の暖水を避けるために深い潜水を繰り返す行動を行うならば、それは運動エネルギー的には大きな負担となる。現在得られている暖水をさけて冷水の海底まで潜行し、そこにとどまる行動はサケにとってエネルギー節約の側面から有利と考えられるが、しかし母川探索のため鉛直移動を繰り返すならば、運動エネルギー的には大きな負担となり潜行行動は適応的な意義を失う。北太平洋で温暖化が進み、サケが表層の暖水を避けて中層まで潜行し、行動的な環境選択を行うならば、そのための運動コストは大きく、温度選択により得られる節約コストを相殺することになり、仮説としても成り立たないと考えられた。また、沖合回遊中に中層に長時間潜行したならば、回遊の生理的メカニズムを犠牲にする可能性がある。沖合域で実際にどのように行動しているかを次年度に研究する。
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