研究概要 |
サケ科魚類であるスチールヘッドマス(Oncorhynchus mykiss)の未受精卵から3種類のラムノース結合特異的レクチン(STL1、STL2、STL3)を精製した。これらは,それぞれ28kDa,21.4kDa,21.6kDaのサブユニットが非共有結合によりホモダイマーを形成していた。STLの1次構造をアミノ酸配列及びcDNAクローニングから決定したところ,いずれも約95アミノ酸残基からなるドメインがSTL1(266アミノ酸残基)では3回,STL2(195アミノ酸残基)とSTL3(195アミノ酸残基)では2回,タンデムに繰り返された構造から構成されていた。このドメインは糖鎖認識ドメイン(CRD)と考えられ,低密度リポタンパク質リセプター・スーパーファミリーに相同性がみられた。STL1は雌雄の肝臓,腎臓,鰓,心臓に,STL2とSTL3は卵巣に特異的に検出された。受精後,20ug/g含まれていたSTL2とSTL3は徐々に減少し,孵化に最低レベル(5ug/g)になった。RT-PCRによる解析から,STL1は肝臓で,STL2とSTL3は卵巣で発現していることが分かった。STLには卵黄タンパク質との結合性がみられ,ラムノースによって阻害を受けた。以上の結果から,STL1〜STL3は,生体防御と発生に分業して機能していると予測した。
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