研究概要 |
本研究は,養殖生産量の高いブリを対象魚種とし,各種タンパク質原料の利用性改善を計りながら,無魚粉飼料の開発に必要な基礎知見の集積を目的とした。無魚粉飼料の性能改善には、EAA添加が必要で、添加EAAの吸収と、原料タンパク質由来のEAAの吸収とに同時性を与えることが重要である。そこで、物性や形態の異なる飼料の消化管内滞留時間が血漿遊離アミノ酸(EM)の挙動に及ぼす影響等を中心に検討するため、同じ基本組成の原料混合物を大型と小型のエクストルーダを用いて、ドライペレット(SDPおよびEPと略す)とシングルモイストペレット(SMP)を作製し、結晶Met, Lys, Trp(AA)を添加し試験飼料とした。 その結果、消化管内における飼料の消長はその形態に左右され、血漿FAAの挙動にも影響を与え、滞留時間の長いSDPでは血漿中FAA濃度のピークの出現が遅く、飼料タンパク質由来のアミノ酸と添加EAAの吸収に同時性がみられた。さらに、SMPの場合にも、飼料の粘着性を高め、消化管内における崩壊を遅らせるとSDPの場合と同じ効果が得られた。飼料に添加したEAAは飼料形態に関係なく効率よく吸収され、成長に対する効果が認められた。魚粉区より劣るものの、SDP区は他区よりも優れた成績を示した。すなわち、無魚粉飼料の性能は製造方法・条件によって異なることがわかった。無魚粉飼料には魚粉飼料のEAA組成に合わせて結晶EAAを補足添加したが、前者の血漿FAAは後者よりも全般に高濃度で、特にMetは給餌後24時間まで著しく高く、アミノ酸インバランスが示唆され、無魚粉区の飼育成績が劣る理由の一つと推察された。不足するアミノ酸を補足する場合は、個々のアミノ酸の吸収率や血漿FAAのバランスを考慮した添加が必要であることがわかった。
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