研究概要 |
脊椎動物の主要な繊維性タンパク質であるI型コラーゲンは3本のa(I)鎖(分子量約10万)から構成されているが、多くの硬骨魚類ではa1(I)鎖とa2(I)鎖に加えて、他の脊椎動物には認められない固有のa3(I)鎖含んでいる。すなわち、私共は硬骨魚類I型コラーゲンが3種類の異なるaを含むヘテロトリマーを形成していることを、報告した。一般にたんぱく質の構造と機能の解明にはアミノ酸配列の情報が必須であるが、魚類I型コラーゲンに関しては私共が報告したニジマスI型コラーゲンに関する部分的な研究があるのみで、不明な点が多い。本研究は硬骨魚類I型コラーゲンの前駆体(プロコラーゲン)を構成する3本のプロa(I)鎖の全一次構造を世界に先駆けて解明しようとするものである。初年度においてはニジマスヒレ由来の繊維芽細胞を大量に培養してmRNAを抽出し、random primerを用いてcDNAライブラリーを作製した。そして、すでに得られているa3(I)鎖のC末端領域をコードするcDNAをプローブとしてライブラリー検索を行った。約4.3Kbのクローンを塩基配列したところ、a3(I)鎖のシグナルペプチドを含むアミノ酸約1,400残基をコードしていることが判明した。先に報告したa3(I)鎖の部分配列情報をもとに、ニジマスa3(I)鎖の全一次構造を決定することが出来た。この結果ニジマスa3(I)鎖は高等脊椎動物のa1(I)鎖と比べて約70%の相同性を有し、コラーゲン特有の(GIy-X-Y)配列及び繊維の安定性に関与する架橋付近の配列も極めて良く保存されていることが立証された。次年度にはニジマスのa1(I)とa2(I)についても全一次構造を解明し、a3(I)鎖ひいて硬骨魚類I型コラーゲン全貌を明らかにしたい。
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