1.5人の魚類アレルギー患者(患者1〜5)の血清と9種魚類の筋肉抽出液との反応をELISAで調べ、アレルゲン性は魚種間のみならず患者間でも異なることを明らかにした。2.メバチおよびウナギのアレルゲンの挙動をゲルろ過で調べ、アレルゲンは患者によって異なることを明らかにした。すなわち、患者1と2は低分子アレルゲンを、患者3と4は高分子アレルゲンを特異的に認識し、患者5は両方のアレルゲンを同等に認識した。さらに両魚種の低分子アレルゲンを逆相HPLCで単離し、各種分析によりいずれも魚類アレルゲンとしてよく知られているパルブアルブミンであることを証明した。しかし、合成ペプチドを用いた実験から、パルブアルブミンに対して報告されているIgE結合エピトープは患者1と2には当てはまらず、今後の再検討が必要であると判断された。3.メバチの筋肉タンパク質を分画したところ、高分子アレルゲンは筋基質タンパク質画分に回収された。SDS-PAGEおよびアミノ酸分析から筋基質画分には純粋のコラーゲンが含まれ、イムノブロッティングによりコラーゲンがアレルゲンの本体であることが判明した。魚類アレルゲンとしてコラーゲンを同定したのは本研究が最初の例である。4.市販の6種魚肉練り製品およびその主原料であるスケトウダラすり身のアレルゲン性を、パルブアルブミンを認識する患者1の血清およびコラーゲンを認識する患者3の血清を用いたELISAで検討した。その結果、パルブアルミンを認識する患者にとっては、水さらしを十分に施したすり身を原料とした魚肉練り製品は低アレルゲン食品として有望であることが判明した。一方、コラーゲンを認識する患者血清はすべての練り製品およびすり身と反応し、アレルゲンとしてのコラーゲンの除去あるいは低減化が今後の課題である。
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