研究課題
基盤研究(B)
農業用水は灌漑用水として食料生産に欠くことのできない重要な資源であるだけでなく、生活雜排水の稀釈、防火用、消流雪用などの「地域用水」として重要な役割を果たしている。農業用水のこうした機能は地域用水と称せられる。混住化社会の中で環境用水への需要が増加する一方、農業用水利施設の管理や費用負担のあり方が重要な問題として浮上している。地域用水として非農業部門からの水需要の増加に弾力的に対処できる農業用水の利用制度の構築を迫られている。そこで、本研究では、現行の水利権と地域用水の関係、地域用水の費用負担、水利施設の管理主体について事例調査等をふまえながら論点を整理した。水利権との関係では、水使用の目的である「灌漑」が地域用水の機能を内包しているか否かに関して大きく2つの説がある。河川管理者側は「灌漑」には地域用水の機能は含まれていないとする立場をとるのに対して、農水省側は農業用水には作物生産のための灌漑用水だけでなく従来から有する水の多面的機能いわゆる地域用水も含まれるとしている。近年、農業用水に内包されてきた地域用水の機能が農業用水がか分離独立しつつある。管理主体と費用負担については、非灌漑期に地域用水を通水している地域の大半は土地改良区が維持管理し費用も土地改良費の運営費で賄っているケースが多い。また町村がこうした土地改良区に補助を与えているケースもある。非灌漑期の地域用水への取水については、土地改良区から施設を借用し、管理を自治体に任せているケースもある。