平成12年度の研究は、現地調査、数値解析および一部研究の取りまとめである。 まず、現地調査に関しては、タイ国のロップリ市近くの浮稲地域の流域界、用排水系統の調査、アユタヤ市近くの浮稲地域の集水域の構造に関する調査を行った。同時に、これらの地域における水文資料の収集もあわせて行った。これらの浮稲地域の研究は、浮稲地域の持つ遊水機能を定量的に把握して、この地域の用水計画・洪水対策に利用するためである。 次いで、数値解析に関しては、同じくタイ国のバンパコン河における非定常流解析を行った。この数値解析の目的は、河口堰の建設による沿岸域での影響を評価するためである。河口付近では潮汐の影響によって水位の変動が起こるが、河口堰の建設によって、変動の振幅が増幅されたり、場合によっては共鳴現象を起こす場合さえある。数値解析においては、現象を再現しそれらを可視化して現象の理解を深めると同時に、理論解析によって現象の解析を試みた。その結果、現象を高い精度で近似できる近似解を得ることに成功した。 また、新潟県西蒲原の新川流域では、風力発電を用いた排水の可能性の水文解析を実施した。その結果、発電総量においては十分であったが、発電とポンプ運転の需給のバランスを図るのが難しいことが判明した。現在、流域内の貯留能力と需給のギャップの検討を行っている。 一方、これらの研究の成果を一部取りまとめ、浮稲地域の遊水機能に関する研究は、バンコクのカセサート大学で開催されたChao Phraya Delta Conferenceにおいて発表し、また、バンパコン河の潮汐の増幅現象に関しては、本学で実施された農業土木学会応用水理研究部会にて発表を行った。
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