平成13年度の研究は、現地調査、数値解析および研究の取りまとめである、先ず、現地調査に関しては、タイ国のアユタヤ市近くの浮稲地域で農家を個別訪問して稲作栽培の現状と歴史的な変遷に関して聞き取り調査を行った。訪問農家戸数は128戸である。これによって、浮稲稲作と高収量品種の栽培・水管理・収益等における特性や有利性などを統計的に分析することができた。その結果、浮稲栽培が維持される可能性が大きいとの結論に達した。一方、ロップリ市近くの遊水能力解析のための現地調査に関しては、水文資料を収集するため、所管のRID地方事務所を訪問し、また担当官から詳細に水管理に関する聞き取り調査を行った。 数値解析に関しては、理論的研究として最適化手法を用いた大規模樹枝状用水路でのチェックゲートと分水ゲートの開度の決定法、開度変更のタイミング等を解析した。現地適用型の研究としては、新潟県西蒲原の横江排水地区を対象に、低平地タンクモデルによる流出解析を行い、この地区に風力発電を導入して排水を行う可能性に関する分析を行った。その結果、発電電力の総量が消費電力の総量を大きく上回っている場合でも、排水地区内にある程度の遊永能力がなければ排水必要時の需要に対応できなくなることが判明した。愛知県矢作川沿岸の村高用水を対象としては、水位観測データから流量を推定する逆解析を行い、水路の特性である粗度係数の算定方法、流入流量、分水流量の推定方法を試みて実測値との比較から十分実用化の可能性が高いことを示した。 研究の取りまとめに関しては、上記の結果をまとめ、農業土木学会全国大会および農業土木学会応用水理研究部会で発表を行った。現在、以上の成果を論文として取りまとめ投稿準備に入っている。
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