研究概要 |
研究手法の検討,実験装置の組み立て,水文データ収集および現地調査を経て,得られた特筆すべき成果は下記の2点である。 1.シラス層内の雨水の浸透経路:シラス層にはその堆積様式から噴気孔跡が存在する。この噴気孔は直径100〜10cmの礫質で柱状に発達している。シラスの透水係数10^<-4>〜10^<-3>cm/sに比べて礫層の透水性は10^1cm/s以上であり,ほぼ垂直に形成されている噴気孔跡は雨水が短期間に下降する浸透経路に当ると推測できる。 2.シラスの限界動水勾配(i_c)と破壊動水勾配(i_f)との関係:土中のつりあい式より,i_f=i_c+σ_d・tanφ/(γ_w・r)+2c/(γ_w・r)を得た。ここにφは内部摩擦角,cは粘着力,σ_dはダイレイタンシーによる応力,γ_wは水の単位体積重量,rはパイピング孔の直径である。c=0とみなせるシラスではσ_dの正,負によってi_f>i_c,i_f<i_cの関係になる。土の単位体積当りの仕事式よりσ_d=σ_1(dε_v/dε_1)(圧縮時),σ_d=σ_3(dε_v/dε_3)(伸張時)となるから,圧縮状態ではσ_1>0,dε_v>0,dε_1>0よりσ_d>0である。伸張状態ではσ_3>0,dε_v>0,dε_3<0となり,σ_d<0が得られた。この結果,膨張をともなうシラスの浸透破壊は限界動水勾配よりは小さい動水勾配で発生すると考えられる。
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