研究課題/領域番号 |
11460117
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大下 誠一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00115693)
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研究分担者 |
川越 義則 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (80234053)
瀬尾 康久 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (80011914)
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キーワード | 細胞内水 / 細胞膜 / 緩和時間 / NMR / 浸透圧 |
研究概要 |
葉菜類の品質は流通段階における水分損失によって大きく低下する。この水分損失には細胞膜の特性が深く関わっていると考えられるので、オオムギ子葉のプロトプラストを作製して細胞膜の力学的物性を測定し、かつ、細胞の劣化と細胞内水の物理的状態との相互間系を明らかにするためにオオムギ子葉内水のスピン-格子緩和時間T1、スピン-スピン緩和時間T2の測定を行った。オオムギはいずれも播種後12日目のものを用いた。 プロトプラストの密度を1.0×10^6/mlに調整し、0.5Mから0.1Mまでのマンニトール溶液200μ1に4μ1ずつ滴下し40分以上静置した。浸透圧平衡に達したプロトプラスト懸濁液を2μ1ずつ採取し、顕微鏡観察による細胞膜の破壊の有無により生死を判別した。切断後56時間を経過した子葉から作製したプロトプラストは切断直後のものに比べて高い浸透圧のマンニトール溶液中で、すなわち細胞内外の小さい浸透圧差で破壊された。これは子葉の切断とその後の時間経過により、細胞膜の物性が変化し、破壊強度が低下したこと、あるいは細胞膜の劣化により細胞の浸透圧調節機能が低下したことによると考えられる。またプロトプラストは0.90MPaから0.50Mpaにかけてマンニトール溶液の浸透圧が低くなるにつれて生存率が急激に減少することが確認された。 一方、緩和時間については、時間経過と共にT1、T2が長くなる傾向を示した。これは子葉を切断したことによる物理的ストレスから子葉細胞の劣化が進み、細胞内の水の状態が変化したことを示している。 以上により、オオムギ子葉細胞の劣化が細胞膜の破壊強度及び細胞内水の緩和時間に影響を与えることが示された。
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