本研究では高速で走行する2台の車両の位置関係を測定する相対位置測定に関する研究を行う。具体的には強度変調された赤外光の位相差を検出する新方式の位置測定システムを開発することを研究目的とする。ビーム光ではなく、拡散光を用いるため、ターゲットを機械的に追尾する必要がなく、低コストで扱いやすいシステムになり得ると考えられる。今年度は基礎研究として、変調光の送受信と位相差検出の装置を試作し評価試験を行った。主な研究成果は以下の通りである。 (1)送受信器の試作:送信器の光源には高速の赤外LEDを10個用いた。LEDに流す電流を27MHzのサイン波でコントロールすることにより強度変調を行った。受信器は応答性が良く、高周波でノイズが少ないAPD(アバランシェ・フォトダイオード)を用いて製作し、前面にIRフィルタを装着して可視光をカットした。実験の結果、屋内では30m以上、屋外の直射日光下でも約20mの距離で変調信号の伝送が可能であった。 (2)位相差測定装置の試作:送信器からの信号を、位置の異なる3つの受信器で受信し、受信した27MHzの変調信号を増幅後、内部局発信号との3段階のミキシングで5kHzまで周波数変換し、位相差を測定する装置を製作した。3つの信号からは基本的に2つの位相差しか測定されないが、本システムでは誤差低減のため3つの位相差を測定するようにした。位相差測定は、二つの信号のゼロクロスタイミングをとって作られるパルス電圧の積分により行い、位相差と直線関係にある電圧が出力されるようにした。 (3)距離差測定試験:実験の結果、上述の測定距離内で、概ね1cm以内の精度で距離差測定が可能であった。以上により拡散する変調光による位置測定の可能性が実証されたが、距離差のみから位置測定を行うには、現在の精度では不十分である。来年度は距離差のみではなく、絶対距離の測定も含めた幅広い方法を実験する予定である。
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