研究概要 |
本研究では高速で走行する2台の車両の位置関係を測定する相対位置測定に関する研究を行う。具体的には強度変調された赤外光の位相差を検出する新方式の位置測定システムを開発することを研究目的とする。ビーム光ではなく、拡散光を用いるため、ターゲットを機械的に追尾する必要がなく、低コストで扱いやすいシステムになり得ると考えられる。 昨年度までに、送信器から照射される赤外線の変調位相差から、複数の受信器までの距離差を検出し、双曲線法により送信器の位置を推定する装置を試作した。実験の結果、距離差を精度よく測定できたが、双曲線法では幾何学的な誤差が大きくなり、十分な位置認識精度が得られなかった。そこで、本年度は送・受信器間の距離を測定するトランスポンダ方式の測距装置を開発した。距離を直接測定することで幾何学誤差を小さくし、位置認識精度を向上させ得ると思われる。今年度の主な研究成果は以下の通りである。 (1)拡散光による測距装置の試作:A,Bの2局間で変調周波数の異なる拡散光を相互に送受信し、両局で得られるビート信号の位相差より距離を測定するトランスポンダ方式の測距装置を開発した。送信信号の変調周波数はA,Bそれぞれ12.001MHzと12MHzに設定した。B局で得られた1kHzのビート信号は450kHzのFM信号に変換し、オフセット変調で、変調光にのせてA局へ伝送した。 (2)距離測定試験:実験の結果、屋内で10m、屋外の直射日光下では4m以内で高精度(誤差2cm程度)の距離測定が可能であった。これにより拡散光を用いた測距装置の可能性が実証されたが、目標とする測定距離(屋外で10m)は達成できていない。今後、光出力を大きくするとともに、信号処理回路の改良を行う必要がある。 なお開発した装置の主要部分については特許を出願した。研究成果は今後論文として発表する予定である。
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