研究概要 |
本研究は、光センシングによる非破壊計測を、植物栽培における診断・栽培管理に応用するための計測技術に高めることを目的とする。具体的には、植物への光照射による非破壊非接触で得られる蛍光・発光および反射光・分光スペクトルを計測する手法を確立し、計測値と植物反応、ストレス状態、栄養状態との関係を定量的、定性的に解明し、生育診断または栽培管理へ導入する際の手がかりとなる情報を提供する。対象とする基本技術はクロロフィル蛍光画像計測,表面温度画像計測などであり、対象とする植物反応・ストレスは,水ストレス,農薬障害,光源の波長特性への応答である。本年度は次の2つの実験を行った。 (1)クロロフィル蛍光の2次元画像計測法の開発 まずクロロフィル蛍光画像計測システムを開発し,個葉のクロロフィル蛍光を,インダクション法と飽和パルス法の両方同時に計測して蛍光パラメータを求め,2次元的な蛍光変化を抽出できる方法を確立した。本方法を用いて,農薬を吸収させてその障害部位検出を行った結果,インダクション法により光化学系IとIIの間に電子伝達系の阻害部位のあることを特定し,飽和パルス法によりqN画像やNPQ画像を用いて障害の進行程度を定量的に評価できることが分かり,両測定法の併用が有効なことを明らかにした。 (2)葉内色素と光反応の関係解明 葉内色素であるカロチノイドおよびクロロフィルは、光合成メカニズムに関与する要素であるために、クロロフィル蛍光特性に影響を及ぼすと同時に,光の波長特性の影響を受けると思われる。そこで,様々な波長特性の光源下におけるこれらの色素合成の特性を遺伝子発現レベルで解析するために、指標となる発現遺伝子の抽出を試みた。オオムギを材料とし,カロチノイド合成に関わる酵素遺伝子であるGGPS,PSY,PDSの単離抽出に成功し,その発現量をモニタリングする実験系を確立した。
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