研究分担者 |
吉田 敏 九州大学, 生物環境調節センター, 助教授 (90191585)
宮内 樹代史 高知大学, 農学部, 講師 (80253342)
河野 俊夫 高知大学, 農学部, 助教授 (60224812)
荒木 卓哉 九州大学, 生物環境調節センター, 日本学術振興会特別研究員
江口 壽彦 九州大学, 生物環境調節センター, 助手 (40213540)
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研究概要 |
本研究では,インタクトの果実の肥大生長,蒸散,呼吸のオンライン計測システム,果柄を通って果実へ集積する物質(師管液,道管液,糖,各元素)のフラックスの評価法を確立し,果実への物質集積に対する環境作用の機作を解明することを目的としている.最終年度である本年度は,実際の栽培現場において,果実への師管および道管経由の物質集積の分別評価の簡便法を確立し,トマトおよびスイカ果実への物質集積に対する短期間の塩ストレス処理の効果を解明するとともに,深層水塩施用による高品質トマト生産の可能性を実証した.本年度に得られた結果は下記のとおりである. 1.小果柄を熱処理した果実と熱処理しない果実の数日間の肥大生長と元素の蓄積量の比較によって,師管と道管経由の物質集積量の分別評価を可能にした.さらに,物質集積量を師管液と道管液の集積量でそれぞれ除することによって,師管液および道管液中の物質濃度の評価を可能にした. 2.ルシファイエロー(蛍光染料)およびC^<13>をトレーサとして用いることによって,小果柄を通る果実からの汁液の逆流の実証を可能にした. 3.ハウスでのトマト水耕栽培での短期間の塩ストレス処理によって,果実内に集積する汁液に占める道管液の割合は10%に低下し,師管液の割合が90%に増加した. 4.ハウス内での保水シート耕式とNFT式のトマト水耕栽培において,果実肥大期のわずか2週間だけ海洋深層水塩を施用することによって,トマト植物に浸透圧調節機能を発現させ,糖濃度,酸濃度および各種の元素濃度が著しく高い高濃度トマトの生産が可能であることが示唆された. 5.塩ストレス期間をわずか2週間に限定することによって,果実収穫量の減少および尻腐れの発症を少なくすることができた. 6.師管経由および道管経由の元素集積の動態を定量的に明らかにすることができた.とくに,師管経由の果実への元素集積の重要性が定量的に示された. 7.スイカ植物においては,塩ストレス処理による浸透圧調節機能は顕著ではなく,糖を含む汁液の果実からの逆流が顕著であり,果実の高濃度化は生じなかった.
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