研究概要 |
本年度は、収集個体中エンドファイト感染個体のアルカロイド分析とエンドファイト菌の分離・同定を主として行った. 感染を確認したこれらの個体は岩手大学の構内圃場に保存し、植物体の試料からサンプリングして宮城農業短期大学でアルカロイドの分析を行った.その結果,深浦から収集したペレニアルライグラスを除く全ての個体でアルカロイドが検出された.ペレニアルライグラスではErgovaline, ErgovalininとLolitremBのいずれの成分も、トールフェスクではErgovalineとErgovalininが検出された. 畜産草地研究所では、平成12年度までに北日本各地から収集されたNeotyphodium属のエンドファイトについて、既報のマイクロサテライトマーカーを用いた検出と簡易同定を行った。プライマーセットB9.1-B9.4でのPCRではペレニアルライグラスからのサンプル7点中5点、トールフェスクからの14点中11点で増幅産物が見られ、これらの植物体にNeotyphodium属のエンドファイトが感染していることがDNAレベルでも確認された。増幅産物のサイズから、ペレニアルライグラス及びトールフェスクに感染しているエンドファイトはそれぞれLpTG-1,LpTG-2とFaTG-1,FaTG-2の可能性が高いと考えられた。 北海道大学では、エンドファイト感染個体と非感染個体の競合力を単植区とクローバとの混植区を設けて比較した。地上部乾物重では、単植区では感染と非感染個体間の差が見られなかったのに対して混植区では第2回刈り取り以降に感染個体が大きくなった。また、乾燥処理を加えた時、地上部、地下部ともエンドファイト感染個体の乾物中が大きくなった。 岩手大学ではエンドファイト系統の特性を把握する上で必要となる、エンドファイト感染個体から同一遺伝子型を持つ非感染個体作出法の検討を行った。3種類の殺菌剤の処理条件を変えて効果の比較を行ったところ、ペレニアルライグラス及びトールフェスクともベンレートの50倍48時間処理が最も効果が高く、さらにトールフェスクではサプロールの効果も高く、ペレニアルライグラスのエンドファイトと異なる結果が得られた。
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