研究概要 |
本研究は,牧草中のエンドファイト感染率と我が国の気象条件下における感染個体の消長を調べ,同一遺伝子型を持ったエンドファイト感染(E+)、非感染個体(E-)の作出法の検討を試み、E+個体の特性を競合力とミネラルの吸収特性から検討し、イネ科植物とエンドファイトの共生機構を明らかにしようとした. 北日本のベレニアルライグラスとトールフェスクでエンドファイト感染状況を調べた結果、それぞれ10%と15%が感染しており,感染個体の平均アルカロイド含有率は,エルゴバリンが1.86ppmと6.27ppm,ロリトレムBはベレニアルライグラスで1.41ppmであった.エンドファイト感染個体率の消長は立地条件で差が見られ,河川敷に造成されているゴルフ場と競技場では大幅に上昇した.夏期の高温,乾燥に加えて土質が影響したと考えられた。 ベレニアルライグラスとトールフェスクでE+個体からE-個体を作出するために、浸透性殺菌剤を用いた方法を検討した結果,ベノミル剤は両草種に有効で,トリホリン剤はトールフェスクにのみ,チファネートメチル剤はいずれの草種にも有効ではなく,殺菌制とエンドファイト種の間に特異性が認められた.また、牧草種子を免疫組織化学的な方法(イムノブロットキット)で検定したところ,おおむね正しく判定できた. E+の競合性は,ベレニアルライグラス単植ではE-との違いは認められなかったが,シロクローバとの混植ではE+の競合性が高まった.乾燥条件下での生育の違いを調べたところ,E+とE-で有意な差異が認められたのは,対照区の乾物重のみで,乾燥処理区では差異は認められなかった.赤色土とクロボク土でトールフェスクのE+とE-を栽培した結果,クロボク上ではE+の生育が旺盛で水分利用効率も高かったが,赤色土では逆にE-が高かった.また,ミネラルの吸収量を調べた結果でも,E+のMg, Ca, K吸収量が多かった.水耕栽培条件下における生育特性を調査したところ,ベレニアルライグラスではE+は草高が高く,根面積が大きく,二次根が長い結果が得られ,トールフェスクでも同様の結果と,なった.
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