鶏骨格筋細胞の増殖・分化・発達の機能と調節を、細胞生化学的手法を用いて遺伝子レベルで解析するために、鶏筋芽細胞樹立細胞系(Cell line)を作成し、食肉生産の向上に応用することを目的として、本年度は、鶏骨格筋筋芽細胞Cell line作成を試みるとともに、鶏筋芽細胞における増殖・分化因子の検索を試みた。 (1)鶏骨格筋筋芽細胞Cell lineの確立 前年度に引き続き、鶏骨格筋細胞Cell lineの確立を目指した。まず、筋細胞特異的タンパク質のプロモーター配列を3種(ミオシン重鎖、αアクチン、ビメンチン)をクローニングした。次にプロモーターレスのGFPを含むプラスミド(pd2EGFP-1)にプロモーターをligationして、鶏筋芽細胞にtransfectionした。現在、その解析を進めており、鶏筋細胞で持続的に発現するプロモーターが検出された場合、オンコジーン(SV40 large T等)とのコンストラクションを作成して、cell line化を進める予定である。 (2)鶏筋芽細胞における増殖・分化因子の検索 初代筋芽細胞を用いて、筋細胞の増殖・分化を調節する因子を検索した。特に、胚発生後期に増加するプロスタグランジン(PG)、鶏初期成長時の血中濃度が高いβ-Hydroxybutyrate(BHB)および残存卵黄抽出タンパク質に着目して解析した。 a.培養培地に内因性PG生産を抑制するためにAspirinを0.2mM添加した筋芽細胞培養系にPGE_2を添加したところ、ミオシン量、CPK活性、そしてMyoD mRNA発現量が増加し、PGE2が筋細胞の初期分化を促進することを明らかにした。 b.筋細胞のエネルギーがグルコースもしくはBHBで供給される実験系を作成した。次にこの条件下にBHBを添加したところ、BHBが増殖期にある筋細胞では細胞増殖を促進し、分化期の細胞では筋管の形成を促進することを明らかにした。 c.鶏初期成長時の腹腔内に存在する残存卵黄よりタンパク質成分を抽出し、筋細胞培養系に添加したところ、低濃度の添加(1〜100μg)では筋細胞分化に影響がなく、高濃度(1 or 3mg)の添加では筋細胞が特異的に死滅した。すなわち、残存卵黄中には細胞死を誘導する物質が存在する可能性が示唆された。
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