鶏骨格筋細胞の増殖・分化・発達の機構と調節を、細胞生化学的手法を用いて解析して食肉生産の向上に応用することを目的として、鶏骨格筋筋芽細胞Cell line作成を試みるとともに、鶏筋芽細胞における増殖・分化因子の検索を行なった。 (1)鶏骨格筋筋芽細胞Cell lineの確立 a.コロニー形成法により鶏筋芽細胞をクローンニングすることができたものの、継代によりその増殖が停止した。 b.鶏筋芽細胞の増殖能を高めるために、SV40T抗原をトランスフェクションした。しかし、混入した非筋細胞の増殖速度が速くT抗原の発現が一過的(Tangent)な筋芽細胞を得るに過ぎなかった。 c.鶏筋細胞特異的タンパク質のプロモーター配列をGFPを含むプラスミド(pd2EGFP-1)にligationして、鶏筋芽細胞にtransfectionした。現在、その解析を進めており、T抗原とのコンストラクションを作成して、cell line化を進める予定である。 (2)鶏筋芽細胞における増殖・分化因子の検索 a.筋細胞培養系におけるMyoDおよびMygenin発現量を調査したところ、MyoDが12時間(すなわち培養開始から60時間後)、Myogeninが24時間(すなわち培養開始から72時間後)にその発現量がピークに達し、その後徐々に減少した。 b.培養培地に内因性PG生産を抑制するためにAspirinを0.2mM添加した筋芽細胞培養系にPGE_2を添加したところ、ミオシン量、CPK活性、そしてMyoDmRNA発現量が増加し、PGE2が筋細胞の初期分化を促進することを明らかにした。 c.筋細胞のエネルギーがグルコースもしくはBHBで供給される実験系を作成した。次にこの条件下にBHBを添加したところ、BHBが増殖期にある筋細胞では細胞増殖を促進し、分化期の細胞では筋管の形成を促進することを明らかにした。 d.鶏初期成長時の腹腔内に存在する残存卵黄よりタンパク質成分を抽出し、筋細胞培養系に添加したところ、低濃度の添加(1〜100μg)では筋細胞分化に影響がなく、高濃度(1or3mg)の添加では筋細胞が特異的に死滅した。
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