研究課題/領域番号 |
11460126
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 伸一郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00197146)
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研究分担者 |
伯野 史彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (30282700)
片岡 宏誌 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (60202008)
西原 真杉 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (90145673)
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キーワード | インスリン様成長因子 / トロピックホルモン / cAMP / シグナルクロストーク / 細胞内シグナル伝達 / チロシンリン酸化 / 細胞増殖 / チロシンキナーゼ |
研究概要 |
インスリン様成長因子(IGF)の生理活性は、他のホルモン・成長因子により増強されることが知られている。我々は、甲状腺由来FRTL-5細胞をトロピックホルモンであるTSHやcAMPアナログで長時間前処理することにより、IGF-Iレセプターキナーゼ基質のひとつであるp66 ShcのIGF-I依存性チロシンリン酸化が増強され、この増強はMAP kinase経路に伝えられ、この経路の活性化がcAMPとIGF-Iによる相乗的な細胞増殖誘導に必須な役割を果たすことを明らかにした。この際、p66 Shcの増加は、Shc mRNAの増加を介して引き起こされ、この転写速度の上昇には、チロシンリン酸化p125によるPI3-kinaseの継続的な活性化が必要であることを発見した。そこで、我々は、チロシンリン酸化p125の単離・精製を行い、部分アミノ酸配列を決定したところ、新規タンパク質であることがわかった。一方、FRTL-5細胞のTSH前処理は、IGF-Iレセプターキナーゼの他の基質であるIRS-2のIGF-I依存性チロシンリン酸化も増強し、IRS-2下流のPI3-kinase経路のシグナルを一過的に強める結果、細胞増殖が著増することも明らかとなった。この際、長時間のcAMP刺激によりIRS-2量は変化しないが、新しく合成されたタンパク質がIRS-2と相互作用するため、IGF-IレセプターキナーゼがIRS-2をよりチロシンリン酸化するようになるという新しいクロストーク機構が存在することを見出した。そして、p125、IRSAPを介した2つの異なる経路により起こったIGFシグナルの増強は、G1サイクリン量を増加、CDK inhibitor量を減少させ、その結果CDK2/4の著しい活性化を生じ、細胞増殖の相乗的誘導が引き起こされることを明らかにした。
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