研究概要 |
まず,未変性のAnti-Agglutinin(AA)を多量に精製するため,抗AAポリクロナール抗体を結合させたアフィニティーカラムの作成を試みたが,カラムの特異的な結合能が著しく低く,十分な量のAAを回収できなかった.そこで,AAが小麦胚芽凝集素(WGA)結合タンパク質(Harayama et al.,1996)であることに着目し,市販のWGAアフィニティーカラム(WGA-アガロース,豊年)による部分的な分離を行った.回収されたタンパク質の純度をSDS-PAGEにより調べたところ,AA(25kDa)のほかに8種類のタンパク質(97.4kDa以上,64kDa,44kDa,41kDa,29kDa,18kDa,15kDaおよび14.4kDa以下)が検出された.ついでさらに純度を高めるため,これらのタンパク質溶液を陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(DEAE-Sephacel)にかけたが,最終的に回収された分画のタンパク質濃度はかなり低く,AA以外のタンパク質も依然として混入していた.そのため,WGAアフィニティーカラムにより分離されたタンパク質を精子浮遊液にタンパク質濃度で5〜75μg/mlとなるように添加し,受精能獲得誘起処理を行った.処理後の精子にCTC染色を施し,蛍光顕微鏡下で観察したところ,Bパターン(受精能獲得精子型)に分類される精子の割合に有意な変動は認められなかった.以上のように,AAを含むWGA結合タンパク質には精子の受精能獲得を抑制する作用は見出せなかったが,AAそのものに精子受精能獲得抑制作用がないのか,あるいは純度が低いために抑制作用が発揮できなかったのかについては不明である.次年度において,より高純度の未変性AAを大量に精製する方法を確立し,再度精子浮遊液への添加実験を行う必要がある.
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