研究概要 |
昨年度に引き続き,抗Anti-Agglutinin(AA)ポリクロナール抗体を結合させたアフィニティーカラムを用いて.未変性AAのブタ精漿からの大量分離を試みたが,依然としてカラムの結合特異性は改善されず,回収サンプルには様々な種類のタンパク質が混入していた。そのため,AAの大量分離法確立に関する研究を中断し,もう一方の研究テーマである頭部間凝集の細胞内情報伝達経路について,特に炭酸水素イオン・アデニール酸シクラーゼ(AC)・サイクリックアデノシン1リン酸(cAMP)・タンパク質キナーゼ(PK)系が果たす役割について検討した。射出精子を洗浄後にCa欠mKRBに浮遊させ,37℃または38.5℃のCO_2インキュベーター内で1時間インキュベートした。インキュベーション後の精子試料の一部をスライドグラスに塗抹・風乾した後に,ギムザ染色を施し,光学顕微鏡下で観察して頭部問凝集精子率を算出した。精子試料に100μM forskolin(AC活性化剤)を添加した場合の頭部間凝集精子率は無添加の対照区に比べて有意に高い値であった。また,forskolinの代りにcAMP依存性PK(PKA)活性化剤のdbcAMP(1〜1,000μM)を添加すると,頭部間凝集精子率は添加濃度依存的に有意に上昇した。しかしながら,dbcAMP(1,000μM)とともに,PKA阻害剤であるRp-cAMPS(1,000μM)またはH-89 2HCl(5μM)を添加すると,dbcAMPの作用により上昇した頭部間凝集精子率は有意に低下した。以上の結果から,炭酸水素イオン・AC・cAMP・PK系はブタ射出精子での頭部問凝集を制御する細胞内情報伝達経路として機能すると考えられる。
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