Phosphodiesterase(PDE)の阻害剤である8-methoxymethyl-IBMX、vinpocetine、trequisin及びdipyridamoleの添加が、鶏精子の運動性に及ぼす影響を検討した。各阻害剤を添加して5分後の正常精子の運動性は、30℃では、いずれも60%前後の値を示し、添加濃度が異なっても明らかな影響は観察されなかった。一方40℃では、いずれの濃度域とも運動性は完全に抑制されていた。40℃において、不動化を起こしている正常精子に2mMのCa^<2+>を加えると、運動性が回復した。その後、阻害剤を添加すると、いずれも運動性は著しく抑制された。Ca^<2+>の代わりにプロテインホスファターゼ阻害剤であるカリクリンAと阻害剤を加えた場合も、ほぼ同じ値を推移した。除膜精子に、各阻害剤を添加して5分後の運動性は、30℃では、いずれの阻害剤とも、添加濃度による影響は見られず、60%前後の値を維持していた。一方40℃では、いずれの濃度域とも運動性は完全に抑制されていた。30℃と40℃における阻害剤添加5分後の正常精子内ATP濃度は、8-methoxymethyl-IBMX及びvinpocetine添加区では、無添加の対照区に比べて差異は認められなかった。これに対して、trequisin添加区のATP濃度は著しく低下した。 以上の結果から、PDE阻害剤単独の添加は、鶏精子の運動性に影響を与えないことが明らかになった。しかし、Ca^<2+>などで運動が賦活化された精子の運動維持に、PDEは関与しているものと推察された。 9920590FA01 00004精子
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