研究課題
基盤研究(B)
偶蹄類家畜における形質転換動物や、体細胞クローン動物の作出に必要な未受精卵を多数確保するのは困難な場合が多い。もしも、XXの核型をもつES/EG細胞をin vitroで生殖系列に分化誘導し、究極的に卵細胞を形成させることが可能になれば、動物バイオテクノロジーに画期的な進歩がもたらされる。本研究の目的は、このような可能性を探索するための基礎研究を行うことにある。1)マウスES細胞の生殖系列化に関する研究:始原生殖細胞(PGC)のマーカータンパク質については、4C9をはじめ、多数の抗体が開発されている。また、ニワトリPGCを用いた2C9と呼ばれる抗体も開発されている。今回、マウスES細胞中に4C9、2C9陽性細胞があることを明らかにした。一方、マウス移動期PGCのin vitro増殖条件を確立し、同条件下で4C9、2C9陽性ES細胞の増殖を試みたが、十分な効果は得られなかった。また、vasa遺伝子発現がPGCのマーカーとなることが示されているので、同遺伝子の構造と発現の解析を行った。2)ヤギPGCのin vitro培養法樹立に関する研究:シバヤギPGCのin vitro培養系樹立を目的としてシバヤギ幹細胞因子(gSCF)cDNAのクローニングを行い、得られたcDNAを用いて可溶型、および、膜型SCFを発現するフィーダー細胞株を樹立した。3)XX-ES細胞の特性に関する研究:XX-ES細胞におけるLyonizationに関しXist、ならびにXistのantisense遺伝子(Tsix)の発現が確認され、機構解明に重要な手がかりが得られた。4)ブタ卵細胞のIVM、IVF系の樹立と応用に関する研究:ブタ卵胞卵のIVM、IVF後の発生能に関して基礎研究を行った。また、有用形質転換家畜作出の基礎として、最近実用性が高まりつつあるribozymeの応用について研究を行った。5)総括:最近、ES/EG細胞の生殖系列化を試みる研究は、急速に進展しつつある。本研究課題は、それらの試みの端緒として有用な成果を挙げたものと思われる。(以上866字)
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