ネコ免疫不全ウイルスに対する宿主防御機構の解明

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11460136
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 高橋 英司 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (50183439)
• 研究分担者: 前田 健 山口大学, 農学部, 助教授 (90284273) ; 宮沢 孝幸 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (80282705) ; 堀本 泰介 大阪府立大学, 農学部, 助教授 (00222282)
• キーワード: FIV / CD8 / CD56 / 感染防御 / エイズ / NK細胞 / T細胞

研究概要

ネコ免疫不全ウイルス(FIV)は、後天性免疫不全症候群(エイズ)様症状のネコから分離され、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)と同じくレトロウイルス科レンチウイルス属に分類される。
本研究はFIV防御上大きな役割を担っていると考えられるCD8陽性細胞およびNK細胞を中心に、そのphenotypeと抗FIV活性(細胞傷害活性、FIV増殖抑制因子)を詳細に分析することを目的とする。
今年度は基礎的研究として以下の成果を得た。
1.ヒトNK細胞マーカーであるFcγRIII-AとCD56抗原のネコ相同体の解析を行った。ネコのFcγRIIIの膜貫通型分子のクローニングとバキュロウイルスを用いた組換えネコCD56の作出に成功した。
さらにネコCD56に対するモノクローナル抗体を作製した。
2.ネコCD3ε相同体をコードするcDNAをPCR法により単離し、バキュロウイルス系を用いて組換えタンパクを発現した。ヒトCD3εの細胞ドメインに対するポリクローナルを用いての間接蛍光抗体法、western blotting法により、その発現が確認されるとともに、単離した遺伝子がネコのCD3ε相同体をコードしていることが示された。
3.近年、FIV感染ネコにおいてCD8α+β-or low細胞群が増加することが見いだされ、さらにCD8α+βlow細胞群はFIV増殖を抑制する活性を持つことが明らかになっている。ネコCD3εに対するモノクローナル抗体を作製し、フローサイトメトリーによる解析を行った。その結果、CD8α+β-or low細胞群はCD3εを発現していることから、T細胞系だと考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Nishimura,Y.,et al.: "Molecular cloning and sequencing of the cDNA encoding the feline FcγRIII(CD16) homologue"Veterinary immunology and Immunopathology. (In press). (2000)
• [文献書誌] Nishimura,Y.,et al.: "Molecular cloning and sequencing of a cDNA encoding the feline cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4(CTLA4) homologue"European Journal of Immunogenetics. (In press). (2000)
• [文献書誌] Nishimura,Y.,et al.: "Molecular cloning and sequencing of a cDNA encoding the feline T-cell antigen CD28 homologue"Immunogenetics. 50. 369-370 (1999)
• [文献書誌] Nishimura,Y.,et al.: "Molecular cloning and sequencing of a cDNA encoding the feline T-cell activation antigen CD26 homologue"Immunogenetics. 50. 366-368 (1999)
• [文献書誌] Nishimura,Y.,et al.: "Characterization of feline CD56 molecule expressed on insect cells by baculovirus expression system"Journal of Veterinary Medical Science. 61. 701-703 (1999)
• [文献書誌] Nishimura,Y.,et al.: "Molecular cloning and expression of feline CD3ε"European Journal of Immunogenetics. 26. 29-32 (1999)