本年度における研究は、以下の(1)および(2)である。 (1)ファージ発現抗体の作成(既樹立ニワトリ型モノクローナル抗体 既知のプリオンタンパク特異的ニワトリモノクローナルとして、筆者らが作成したHUC3-11を用いた。HUC3-11ハイブリドーマからmRNAを抽出しcDNAを合成し、これを用いて抗体遺伝子V領域(VHとVL)を増幅するとともに、単鎖のscFv抗体遺伝子を作成した。これをpPDS発現ベクターに挿入し大腸菌を形質転換し、この大腸菌にヘルパーファージを感染させ、ファージ発現抗体ライブラリーを作成した。作成できたfファージ発現抗体は、ELISAでその特異性を確認することができた。 (2)哺乳動物プリオンタンパク特異的ニワトリモノクローナルパネル抗体の樹立 H-B15近交系ニワトリに、組換えヒトプリオンタンパクあるいはヒツジプリオンタンパク遺伝子を導入したラット神経芽細胞株(EFBS株)を免疫した。組換えヒトプリオンタンパクを高度免疫したニワトリの血清中に抗ヒトプリオンタンパク抗体の上昇を確認した。また、EFBS株免疫ニワトリでは、EFBS株に対する免疫応答の他にヒツジプリオンタンパクペブチドに対する免疫応答も確認することができた。各々の免疫ニワトリから脾細胞を調整し、融合用細胞株MuH1とPEGを用いた細胞融合実験と、(1)と同様の方法で免疫脾細胞から抗体遺伝子を調整した。前者では、細胞融合実験から目的とする抗体が得られなかったが、組換え型抗体を多数樹立することに成功した。これらの抗体の中には、従来報告のなかった特異性を示す抗体も含まれていた。一方、後者の実験においては、細胞融合実験で約50種のハイブリドーマを樹立することができた。これらが分泌する抗体の特異性および免疫脾細胞からのファージ抗体の樹立についての実験は現在進行中である。
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