11-12年度における研究成果の概要 (1)ファージ発現抗体の作成(既樹立ニワトリ型モノクローナル抗体活用) 既知のプリオンタンパク特異的ニワトリモノクローナルとして、筆者らが作成したHUC3-11を用いた。HUC3-11ハイブリドーマから抗体遺伝子V領域(VHとVL)を増幅させ単鎖のscFv抗体遺伝子を作成した。これを用いてファージ発現抗体を作成し、その特異性はELISA法で確認することができた。 (2)ファージ発現抗体の作成(新規樹立ニワトリ型モノクローナル抗体活用) 新規にプリオンタンパク特異的ニワトリモノクローナル抗体の作成を行った。得られた抗体は、いずれもプリオンタンパクアミノ酸残基23-121の領域を認識する抗体で、ELISAおよびウエスタンブロティング法のいずれでもプリオンタンパクを検出できる抗体であった。 (3)ファージ発現抗体を用いたプリオンタンパクの高感度検出の試み 既知のファージ発現抗体(HUC2-13)を用いて、微量プリオンタンパク抗原の高感度検出のための基礎的研究を行った。ファージ発現抗体は、ファージ体表面に1本鎖抗体分子を発現しており、ファージ体内には抗体遺伝子を含むファージDNAが包含されていることから、抗体遺伝子標識抗体としての活用が期待できた。一般に、免疫PCR法は、抗体分子に合成DNAを標識したDNA標識抗体を作成し、これを用いて抗原抗体反応を行い、その後に標識DNAをPCR法で増幅するものであるが、前述の通りファージ抗体自体がDNA標識抗体であることから、ファージ発現抗体を用いて免疫PCRを行えると考えた。基礎実験の結果、陰性対照においても遺伝子の増幅が認められたことから、反応系の改良を必要としたが、pg-fg/mlの微量の抗原が検出することの可能性を見いだした。
|