研究課題
北海道で分離されたダニ媒介脳炎(TBE)ウイルスの病原性発現の機序および北海道への導入の起源について検討を加えた。さらに北海道、極東ロシアおよびシベリアにおけるTBEウイルスの型別と分布について調査し以下の成績を得た。1.マウスモデルにおいてTBEウイルス北海道株、極東ロシア株およびヨーロッパ株を比較したところ、これらの株は共通の神経毒力を示したが、北海道株の神経侵襲性は他の2株より弱かった。2.マウス感染モデルを用いて、オーストリアで市販されているTBEウイルスワクチンの評価を行ったところ、本ワクチンは北海道株と極東株に有効なことが判明した。3.北海道においてTBEウイルスのウマおよびイヌの血清疫学調査を実施したところ、渡島、胆振、桧山および後志の道南の4支庁に汚染が広がっていることが判った。4.ロシアハバロフスクにおいて1998年に分離したTBEウイルス株、1937年に分離されたSofjin株および1995〜1997年に北海道で分離した株のE-タンパク遺伝子を系統解析したところ、北海道株は極東ロシア株から260〜430年程前に分岐したと推定された。5.ダニ媒介脳炎ウイルス北海道株に対する単クローン性抗体を作製し、各種フラビウイルスに対する反応パターンを調べた。この単クローン性抗体を用いた蛍光抗体法により分離株の同定手技を確立した。6.1999〜2000年にロシアのハバロフスク市周辺地区、ウラジオストック市周辺地区、およびイルクーツク市周辺地区で採集したマダニ類からTBEウイルスを分離した。ハバロフスクおよびウラジオストックから分離されたTBEウイルスは極東型に、イルクーツクからのウイルスはシベリア型に分類された。
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