研究概要 |
平成14年度は本研究の最終年度にあたり、前年度までに実施された研究の取りまとめを中心に行った。平成13年度から14年度にかけ実施した研究のうち、イヌの中脳黒質の加齢性病変について論文として公表した(J. Vet. Med. Sci. 2003,65,Vol.2 In press.)。本研究では、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)に対する抗体を用いて黒質のドパミン生成神経細胞を描出し、同部の加齢性変化を検討した。大脳では神経細胞の減少・神経膠細胞の増加が比較的年齢依存性にみとめられるのに対し、ドパミン生成神経細胞数は、加齢やβアミロイド沈着による影響は受けずに良好に維持され、ssDNA陽性アポトーシス細胞も増加する傾向はなかった。また黒質では好塩基性あるいは好酸性結晶状封入体が老齢犬に頻繁に観察された。しかしながら、これらの封入体はパーキンソン病のレビー小体と異なる機序で形成され、神経細胞死を誘発しない変化であろうと予想された。しかしながら、高齢犬の黒質神経網には、抗ユビキチン抗体で描出される変性神経突起が加齢依存性に有意に増加することが同時に明らかにされ神経細胞内の封入体形成がこの変化に関与する可能性も考えられた。 これら直接の研究成果の他に、本研究の一貫として収集された、動物の様々な自然発生中枢神経系疾患についても病理学的検討が加えられ、イヌの中枢神経系腫瘍(J. Vet. Med. Sci.2002,64,Vol.2,2003,65.Vol.1.Vol.2)や抗コリンエステラーゼ抗体が関与すると考えられる重症筋無力症など(J. Vet. Med. Sci.2002.64.Vol.7)、今後の動物神経系疾患の研究に有用と思われる情報が収集され、それぞれの内容について学術雑誌に公表した。未公表のデータについても来年度中に学術雑誌に公開する予定であるが、本研究報告書にはその内容を明記した。
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