研究概要 |
コプラナーPCBs(Co-PCBs)のエンドポイントとしての生殖・発生毒性における量-反応関係を明らかにすることにより、毒性評価のための科学的証拠を蓄積することを目的とした。(1).誘起排卵および外陰部奇形の発生をエンドポイントとした時の、経胎盤・経乳汁曝露によるCo-PCBsの用量反応関係を明らかにし、無作用量を求めた。すなわち、妊娠15日のラットに、Co-PCBsの同族体である、3,3',4,4',5-P_5CB(PCB#126)を0(媒体対照、コーン油)、0.3、1、3、10あるいは30μg/kgを1回経口投与して、出生子を得た。出生子は、そのまま母動物に哺育させ、25日齢にequine chorionic gonadotropin (eCG)を5IU皮下投与した。動物はeCG投与後72時間に屠殺して排卵検査を行った。また、外陰部における形態異常の有無及び程度を観察した。その結果、3μg/kg以上の用量によって、排卵率が有意に低下し、また、外陰部における形態異常の頻度及び程度が用量に依存して増加した。以上の結果から、本研究における実験条件下では、誘起排卵抑制及び外陰部奇形の発生に関するPCB#126の無作用量は1μg/kgと推定された。(2).2種類のCo-PCBs(PCB#126又はPCB#169)を胎生期に母体経由で暴露した出生子ラット(生後1週から15週)の肝臓におけるCYP1A1、CYP1A2及びCYP2B1/2mRNA発現動態を半定量的RT-PCR法にて検討した。その結果、PCB#126(3μg/kg)又はPCB#169(30μg/kg)に暴露された母ラットより生まれた子(雌雄とも)はいずれも、CYP1A1及びCYP1A2mRNAの発現量が増加していた。また、PCB#126又はPCB#169を暴露した妊娠ラットの胎盤におけるCYP1A1、CYP1A2及びCYP2B1/2mRNA発現動態を半定量的RT-PCR法にて検討した。その結果、Co-PCBを暴露されたラットの胎盤では、CYP1A1、CYP1A2及びCYP2B1/2mRNAの発現量が増加していた。(3).胎生期にPCB#126又はPCB#169に暴露したラットの出生後(1、3、6及び15週齢)の血漿タンパク質をミクロ2次元電気泳動により分析した。その結果、Co-PCBsの暴露は血漿中補体成分(C3及びC4)への影響が6及び15週齢で認められた。このように、コプラナーPCBs(Co-PCBs)の生体影響をエンドポイントとして生殖・発生毒性をとりあげた場合、その無作用量は1μg/kgと推定される。また、胎児期の暴露及び新生子の乳汁を介する暴露は肝臓におけるCYP1A1、CYP1A2及びCYP2B1/2mRNA発現ならぴに、血漿タンパク質の補体系の動態に影響の発現することを明らかにした。
|