研究概要 |
灰色かび病菌(Botrytis cinerea)の多細胞型付着器形成時に特異的に発現する遺伝子の単離を試みた。本菌の分生胞子を1/2ポテトデキストロース培地に懸濁して15時間プラスチックシャーレ上で静置培養を行い、付着器を形成した菌体からmRNAを抽出した。対照して、本胞子を15時間振とう培養して得られた菌体から同様にmRNAを抽出した。得られた両mRNAをDifferential Display法に供試した。その結果、数種のプライマーを用いた場合、PCR増幅産物のポリアクリルアミド電気泳動において両サンプル間でバンドパターンに違いがあることが確認された。次に、付着器形成時に特異的に見られるバンドを単離してその塩基配列を決定し、その予想されるアミノ酸配列を用いて相同検索を行った結果、Threonyl-tRNA synthetase,Aspartic proteinase,Alphaglucosidaseとの相同性がみられた。Aspartic proteinaseはAspergillus fumigatus及びCandida albicansなどの日和見感染菌において感染時に特異的に分泌される酵素として知られ、病原性に深く関与することが示唆されている。また、Aspergillus fumigatusでは侵入菌糸から分泌されることも明らかにされている。現在、Aspartic proteinase遺伝子の破壊株を作出して多細胞型付着器の形成及びその侵入力との関係を解析中である。
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