研究概要 |
(1) 植物体においてTRAB1と相互作用する因子およびTRAB1-VP1間の相互作用を制御に関わる因子のクローニング TRAB1-VP1間の相互作用を制御する因子のクローニングについて検討した。酵母においては、他の植物由来制御因子が関わることなく、GBD::VP1およびGAD::TRAB1間(GBD=GAL4 DNA結合ドメイン;GAD=GAL4転写活性化ドメイン)での"two-hybrid"相互作用が見られる。しかし、同時にTRAB1とVP1間の相互作用を制御する植物由来の因子を酵母中で過剰発現させることにより、その制御様式の如何に関わらずTRAB1とVP1間の相互作用がさらに強化(あるいは抑制)されるものと期待される。この様な原理に基づく酵母を用いた機能的スクリーニングを進めてきた。現在までに得られている明瞭なポジティブクローン3つは、それぞれrab GTPase family,proryl isomerase familyおよびオオムギのABA誘導性タンパク質HVA22と相同性を示すものであった。何れも機能的説明のが難しいものである。これらのタンパク質がTRAB1依存性のABA応答遺伝子発現に影響を及ぼすか否かをトランジエントアッセイで調べたが、結果は否定的であった。 (2) TRAB1の機能ドメインおよびアミノ酸の解析 TRAB1の機能ドメインや機能アミノ酸を明らかにすることを試みた。GBD(GAL4 DNA-binding domain)::TRAB1融合タンパク質は、GAL4結合部位をもつレポーター遺伝子にABA応答性を付与することができる。これを利用して、様々なdeletionやpoint mutationを調べた。その結果、bZIP領域を含むC-末端領域を欠失させると"constitutive active"になることから、分子内にTRAB1の転写活性化能、あるいはVP1との相互作用を阻害するドメインが存在する可能性が示唆された。また、プロテインキナーゼの標的となりそうな様々なSer/Thr残基をアミノ酸置換したところ、その一つでGBD::TRAB1のABA応答性付与能が失われた。したがって、ABAシグナルは、最終的にTRAB1のリン酸化という形で転写系に伝えられる可能性が示唆された。
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