研究概要 |
GBD(GAL4 DNA-binding domain)::TRAB1融合タンパク質は、GAL4結合部位をもつレポーター遺伝子にABA応答性を付与することができる。これを利用して、様々なTRAB1のdeletionやpoint mutationを調べた.その結果,N末端領域に存在するある特定のSer残基をAlaに置換すると、GBD::TRAB1のABA応答性付与能が失われた。このことから、ABAシグナルは、最終的にTRAB1のリン酸化という形で転写系に伝えられる可能性が示唆された。この仮説を証明するために,イネ培養細胞Oc株を用いてin vivoでのリン酸標識実験を行った。細胞を1時間32P無機リン酸で前標識した後ABA処理し、抗TRAB1抗体を用いて免疫沈降を行ったところ、TRAB1はABA処理後15分以内にリン酸化されることが分かった。また、簡単な細胞分画の実験からは、TRAB1はABAのあるなしに関わらず常に粗核画分に回収されることが分かった。さらに、GFP::TRAB1融合タンパク質をプロトプラストトランジエント発現系で発現させたところ、ABAの有無に関わらず、ほぼ完全な核内局在を示した。したがって、既に核に存在するTRAB1がABA依存的にリン酸化を受けるものと思われた。これらのことから、ABAの1次シグナル伝達の最終事象はTRAB1内の特定のSer残基のリン酸化であると考えられた。現在、このリン酸化部位をタンパク質化学的に同定するための準備を進めている。すなわち、抗TRAB1抗体をアフィニティー精製し、抗体アフィニティーカラムを作成した。これを用いてリン酸化および非リン酸化状態のTRAB1を精製し、LC-MS等によってリン酸化部位を決定することが今後可能であろう。 プロトプラストトランジエント系で発現させたTRAB1がウェスタンブロットにより検出可能であることが分かった。TRAB1にHISおよびHAエピトープタグを付けたコンストラクトの発現も確認した。この様な発現系をTRAB1とOSVP1と相互作用の解析が可能となった。
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