イネ培養細胞Ocを用いてラベリング実験をおこなうと、TRAB1のSer残基がABA処理後15分以内にリン酸化されること、TRAB1はABAシグナルの有無に関わらず核内に存在すること、およびTRAB1のN-末端側保存領域2を欠失させるとABA応答能を失うこと等をこれまでに明らかにした。 今年度は、このABAに応答してリン酸化されるセリン残基を特定することを試みた。HA-HisエピトープタグをつけたTRAB1-HA-Hisを発現するトランスジェニックカルスを作製し、抗HA抗体でウェスタン解析を行ったところ、ABAに依存した移動シフトを示した。アルカリフォスファターゼ処理実験により、この移動度シフトはリン酸化によること、およびABA依存的リン酸化に加えてTRAB1は、別の部位で構成的にもリン酸化されていることが分かった。また、TRAB1-HA-HisのABA依存性移動度シフトはプロトプラストを用いた一過的発現でも確認できた。さらに、TRAB1にSer44→Alaの変異を導入するとこの移動度シフトがみられなくなることから、Ser44がABA依存的にリン酸化されると考えられた。一方、GBD(GAL4 DNA-binding domam)::TRAB1融合タンパク質は、GAL4結合部位をもつレポーター遺伝子にABA応答性を付与することができるが、Ser44→Ala変異によりGBD::TRAB1のABA応答性付与能が失われた。このことから、ABAシグナルは、最終的にTRAB1のSer44のリン酸化という形で転写系に伝えられる可能性が考えられた。
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