研究概要 |
タバコ懸濁培養細胞のトランスジーン・ローカスから、単離されたNuclear Scaffold/Matrix Attachment Regions (SAR/MAR) DNA配列であるTJ1(507bp)は、形質転換体の収率を増加(5〜10倍)させ、遺伝子発現を向上(約5倍)させる^<1)>。しかし、この研究では、選択マーカーであるnptII遺伝子を用いており、MARによる発現の向上の結果として収率が高まったのか、あるいはMARがトランスジーンのゲノムへのインテグレーションを促進するかはこの実験結果だけからは分からない。そこで、非選択マーカーであるGFP遺伝子を用い、その発現カセットの5'および3'端にTJ1を挿入(方向の異なる4種類のコンストラクトを構築)し、インテグレーション効率を調査した。まず、遺伝子導入5日後、10日後、20日後および30日後のGFP発現細胞塊数^<2)>を測定し、ゲノムDNAにトランスジーンがインテグレーションされるまでの日数を推定した。その結果、遺伝子導入30日まで、ゲノムDNAにトランスジーンが導入されると見なしてもよいことが分かった。ゲノムPCRによる解析からもこの結論は支持された。さらに、遺伝子導入30日後のGFP発現細胞塊数を詳細に調査した結果、TJ1の挿入により、インテグレーション効率は、2倍以上向上する(P<0.01)ことが初めて分かった。TJ1の方向の効果は、統計的に有意とはいえなかった。本研究により、トランスジーンのインテグレーションに対するSARの効果を初めて示す実験的証拠が得られ、本成果は、画期的なものである^<3)>。 ^<1)>K.Shimizu et al. Plant Journal,26(4):375-384(2001).^<2)>K.Kondo et al.(submitted).^<3)>H.Hokazono et al.(in preparation).
|