近年、動物細胞内に存在するトランスグルタミナーゼ(II型)は核蛋白質としてヒストン蛋白質を架橋し、細胞分裂の停止をもたらす要因になる可能性が指摘され、細胞生物学上大きな関心が寄せられている。しかし、これまで、どの生物種においても、細胞核特異的トランスグルタミナーゼが存在することを明かにした例は皆無であり、クロマチン・レモデリングにおけるトランスグルタミナーゼの意義は明かではない。イトマキヒトデ核特異的トランスグルタミナーゼcDNAがクローニングされ、その遺伝子配列が決定された。本研究において、全真核生物界で初めて核特異的トランスグルタミナーゼの存在が確定された。この酵素はF-11754aメチルエステルによって効率良く阻害された。また、本酵素はGTPによって阻害されるが、GTPase活性を有しており、生じたGDPでは阻害されない特性を有することが明らかになった。以上の結果から、細胞核特異的トランスグルタミナーゼは細胞核内でG蛋白質として働き、シグナル伝達に関与することが推測された。 卵形成過程で転写され、卵母細胞に集積する核酸結合性タンパク質として、見かけの分子質量(Apparent molecular mass;以下Mrと略称)が約50キロ(以下、kDaと略称)のNucleic acid-associated protein(以下、NAAPと略称)が存在する2)。NAAPは卵母細胞から精製・単離され、NAAPをコードするcDNAの全塩基配列が決定された。NAAPは胚細胞核において染色体に強く会合することが判明した。
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