イノシトールリン脂質シグナル関与キナーゼの分子・細胞生物学的研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11470001
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 近藤 尚武 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20004723)
• 研究分担者: 斎藤 幸子 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (50312559) ; 大和田 祐二 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (20292211) ; 坂上 洋行 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90261528)
• キーワード: リピドキナーゼ / リピドホスファターゼ / PI4キナーゼ / トランスジェニックマウス / SHIP / synaptojanin / 脳内遺伝子発現

研究概要

II型PI4キナーゼの一次構造を解明すべく、骨髄からのcDNAライブラリーを作製して、既知のリピドキナーゼの触媒領域での保存性の高い分子構造にたいするdegenerate primerを作製してPCRクローニングをおこなった。得られたcDNA断片15個の一つ一つについてそれらの塩基配列を目下解析中である。また、既に我々が世界に先駆けて得たIII型PI4キナーゼαとβ双方のcDNAをDBHプロモーターの下流に組み込みトランスジェニックマウスの作製を完了した。得られたマウスを用いて、免疫ないし遺伝子組織化学的解析、細胞ゴルジ分画を用いた生化学的解析等を駆使してこのキナーゼの過剰発現の意義を目下解析中である。一方、リピドキナーゼと同等にリピドホスファターゼの機能のシグナル伝達における重要性に鑑み、SH2ドメイン含有イノシトールポリリン酸5ーホスファターゼ(SHIPとSHIP2)、Gerb2-結合蛋白のsynaptojanin-1と-2、およびphosphatidate phosphatase2bの脳内遺伝子発現を解析し、SHIPは脳に有意の発現を示さないがSHIP2はグリア細胞、おそらくオリゴデンドロサイトに特異的に発現局在すること、synaptojanin-1は多くのニューロンに発現するがsynaptojanin-2は限られたニューロンに発現する他にグリア細胞おそらくオリゴデンドロサイトに優位に発現すること、およびphosphatidate phosphatase2bは胎児脳の胚芽層に強く発現するほかに小脳のBergmann gliaに明瞭に発現することを見出した。つまりリピドホスファターゼの分子特異的な時間・空間的多様性機能分化が示唆された。その他に、3-phosphoinositide依存性プロテインキナーゼ(PDK1,同時にprotein kinaseB(PKB)のキナーゼでもある)の脳内で幅広い発現分布をも明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] R.Suzuki,H.Sakagami,Y.Owada,Y. Handa, H.Kondo: "Localization of mRNA for Dri42, subtype 2b of phosphatidic acid phosphatase in the Yat brain during development"Mol.Brain Res.. 66・1. 195-199 (1999)
• [文献書誌] M.Kudo,S.Saito,H.Sakagami,H.Suzaki,H.Kondo: "Localization of mRNAs for synaptojanin isoforms in the brain of developing and mature rats"Mol.Brain Res.. 64・1. 179-185 (1999)
• [文献書誌] S.Yoshida,H.Sakagami,Y.Owada,H.Kondo: "Localization of PDK-1 mRNA in the brain of developing and adult rats"Tohoku J. Exp.Med.. 187-2. 249-255 (1999)
• [文献書誌] K.Goto,H.Kondo: "Diacylglycerol kinose in the central nervous system-molecular heterogeneity and gene expression"Chemistry and Physics of Lipids. 98-1. 109-117 (1999)
• [文献書誌] Y.Akikawa,A.Kuraoka,H.Kondo et al.: "Involvement of PITPnm, a mammalian homologue of Drosophila rdgB, in phosphoinositide synthesis on Golgi membrane"J、Biol.Chem、. 274-29. 20569-20577 (1999)
• [文献書誌] H.Kondo: "Molecular biological and histochemical analysis on the functional significance of phosphoinositide metabolism in the nervous system"Genetic Influences on Neural and behavioral function、CRC Press. D.W. Pfaff et al.. 261-276 (1999)