研究概要 |
カベオリン-1,2はヘテロオリゴマーを形成し,多くの細胞において形質膜ドメインの一つであるカベオラの基盤を形成する膜蛋白質である.本年度の研究により以下の結果を得た. 1)カベオリン-1のアイソフォーム(α,β)は,従来,同一のmRNAから翻訳開始点の違いによって生じると考えられていた.我々はESTデータベースを検索することで5'端が異なり,βアイソフォームだけを産生するmRNA(5'バリアント)を見出した.5'バリアントは多くの細胞において,従来から知られていたmRNA(FL)とほぼ同じ程度に発現しており,カベオリン-1のアイソフォームの量比の調節が転写レベルで決定されていることを示唆した. 2)カベオリン-1の分子的性質を明らかにする目的で,カベオラを持たない培養細胞にカベオリン-1を発現させると,αアイソフォームはβアイソフォームに比較してより多くの陥凹を形成したが,陥凹形成の効率は低かった.カベオリン-1,2の両方を共発現する細胞ではカベオリン-1が単独で発現する場合に比較して,深い陥凹がはるかに効率的に形成された.この結果は,これまで機能の明らかでなかったカベオリン-2がカベオラの陥凹形成に関与していることを示した. 3)カベオリン-1のN末あるいはC末にEGFPを結合させた蛋白質をMDCK細胞に発現させ,タイムラプス観察を行ったところ,有糸分裂終期の細胞質分裂溝に強度に濃縮し,その後,形質膜全域に分散して一様な分布を示した.この結果はカベオリン-1が形質膜上を二次元的に移動し,細胞質分裂にも何らかの役割を果たす可能性を示唆する.
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