研究概要 |
1.ATP感受性K^+(K_<ATP>)チャネルは、細胞内ATPによって開閉が調節されるK^+チャネルで、膵β細胞においてはグルコース刺激によるインスリン分泌の鍵となる。ラット膵島の免疫組織学的検討により、膵β細胞型K_<ATP>チャネルの構成サブユニットであるスルホニル尿素受容体SUR1が、膵β細胞だけでなく、グルカゴン、ソマトスタチン、あるいは膵ポリペプチド陽性細胞にも発現していることを明らかにした。これらの細胞におけるK_<ATP>チャネルの生理的意義は不明であるが、スルホニル尿素が膵β細胞以外の膵島細胞にも作用する可能性が示唆された(Diabetologia 42:1204,1999)。 2.2-デオキシグルコースに蛍光標識した2-NBDGを用いて、膵β細胞におけるグルコース取り込みを単一細胞レベルで可視化することに世界で初めて成功した。この方法を用いて、グルコースによるインスリン分泌にはグルコース取り込みだけでなく、その代謝によるATP産生が必須であることを単一細胞レベルで初めて明らかにし、グルコースによるインスリン分泌におけるK_<ATP>チャネルの重要性を確認した(J. Bio1. Chem.275:22278,2000)。 3.K_<ATP>チャネルの神経細胞における役割は不明であった。全身けいれんの制御に重要な黒質網様部(SNr)には、SUR1と内向き整流性K^+チャネルKir6.2で構成される膵β細胞型のK_<ATP>チャネルが発現していることを明らかにした。次に、Kir6.2のノックアウト(KO)マウスを用いて、低酸素条件下では、SNrのK_<ATP>チャネルが活性化することによって細胞膜が過分極し、神経活動が低下することにより、全身けいれん発症が防御されることを明らかにした(Science 292:1543,2001)。
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