研究概要 |
L型Caチャネル(LCC)遺伝子を細胞に発現させた場合の多くはリン酸化制御が失われている。これはチャネル蛋白自身以外にもチャネル制御の機能に必要な物質、構造などが必要であることをうかがわせる。このような状況において、我々はカエル心室筋において細胞内Mgによるチャネルのブロックがリン酸化によって失われることにより、チャネル活動の増大が生じることを示した。本研究においてはMgの作用についてモルモットとカエルを比較するなど燐酸化制御に影響を与える因子を多面的に探求し、E-Cカップリング全体を含む統合的な研究の必要性を示した。 1.活性化酸素種のひとつであるH_2O_2は投与時間5分以内でLCC電流を増大させた。それ以上長く投与すると却って電流は抑制された。この電流抑制作用はCa依存性であり、Ba電流では認められなかった。またこのH_2O_2長時間投与によるCa依存性電流抑制はLCCのリン酸化刺激に対する反応を失わせることがわかった(Abstract in J Physiol 527:64P,2000)。2.モルモットの心室筋においては室温ではMgによる電流制御がはっきりと観察されなかった。ところが温度が28℃以上でMgの効果が見られた。この現象はカエル心筋で見られた性質とほぼ一致した。一方、カエル心室筋を室温から17℃に下げて実験を行うと、今度は細胞内Mgの効果がカエル心室筋でも失われた。したがってMgによるL型Ca電流の制御は普遍的に見られる機構であり何らかの温度依存性の因子が関係していると考えられる。3.モルモット心筋とカエル心筋のMgに対する反応の違いはどこに起因するのかはリン酸化制御機構を解明する上で興味深い。そこで、カエル心室筋のLCCα1サブユニットの遺伝子を全長にわたり同定した。この遺伝子はウサギ、ラットのLCCα1サブユニットとアミノ酸レベルで80%の相同性を示した。
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