内向き整流Kチャネル遺伝子(IRK1;Kir2.1)の野生型(WT)、D172N変異体、およびこれらを直列に連結した四量体(WT-(D172N)2-WT)をCOS-1細胞に導入し、発現させたチャネルの外向き単一チャネル電流を記録し、細胞内スペルミンによる抑制効果を検討した。活性化曲線のhalf activation voltageは、33.4mV(WT)、51.2mV(WT-(D172N)2-WT)、76.6mV(D172N)で、変異体の数が増えるにつれて、脱分極側に移動した。+42mVでの定常電流の開時間および零電流時間ヒストグラムを作成した。開時間ヒストグラムは、1つの指数関数でfitでき、コントロールでの平均開時間は、53.1ms(WT)、46.2ms(WT-(D172N)2-WT)、39.4ms(D172N)であった。1、10、(100)nMスペルミンにより、開時間は、濃度依存性に減少した(WTでは37.8ms、11.7ms ; WT-(D172N)2-WTでは34.7ms、10.9ms、1.6ms ; D172Nでは31.6ms、11.1ms、1.7ms)。零電流時間ヒストグラムのfittingには、D172Nチャネルで10、100nMスペルミンの場合を除き、2つの指数関数が必要だった。以上の結果から、スペルミンによるブロックとは別に、チャネル固有の開閉機構が存在し、コントロール時、1つの開状態(O)と2つの閉状態(C_1、C_2)があり、細胞内スペルミンによる抑制状態(B)が加わると考えた(B【double half arrows】O【double half arrows】C_1【double half arrows】C_2)。このモデルに基づきもとめたblocking rateは、6.2-7.7s^<-1>(1nM)、64.7-70.1s<-1>(10nM)、563-603s<-1>(100nM)で、チャネルを構成する変異体の数に依存しなかった。
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