研究概要 |
3種のスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体EDG-1,EDG-3,EDG-5の安定的発現CHO株および内因性EDG発現細胞を用いて、各受容体の生物学的活性、その基礎となる情報伝達機構を検討した。 1.1)EDG-1,EDG-3発現細胞ではS1Pは細胞運動を促進した。この他に、両受容体発現細胞では葉状仮足の形成が見られた。これとは異なり、EDG-5発現細胞ではこれらの反応は認められなかった。EDG-1,EDG-3を介した細胞運動の促進はチロシンキナーゼ阻害薬、ホスファチジルイノシトール(PI)3-キナーゼ阻害薬により抑制された。 2)血管内皮細胞はEDG-1およびEDG-3を発現する。EDG-5の発現レベルは検出限界以下であった。S1Pは血管内皮細胞の運動を促進した。また、マトリゲル内3次元培養下ではS1Pは内皮細胞の管状構造形成を促進した。S1Pは軽度に培養内皮細胞のDNA合成を促進した。 2.1)EDG-1,EDG-3,EDG-5のいずれかを発現するCHO細胞でも、S1Pはmitogen-activatedprotein kinase(MAPK)を活性化した。この反応は百日咳毒素(PTX)処理により完全に抑制され、Rasに強く依存していた。チロシンキナーゼ阻害薬、PI-3キナーゼ阻害薬も部分的にMAPK活性化を抑制した。Cキナーゼ阻害薬には抑制作用はほとんど無かった。 2)EDG-3,EDG-5はRhoを活性化した。しかし、EDG-1にはこの作用がなかった。 3.EDG-5のノックアウトマウスの作製をめざして研究を推進中である。本年度はEDG-5遺伝子の一方を相同的に組換えたES細胞を8クローン樹立できた。今後はこれを受精卵に注入し、ノックアウトマウスの作製に取りかかる予定である。
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