研究概要 |
1.AGR16(EDG5)受容体の構造・機能の相関の解析 EDG5がEDG1,3とは異なり細胞遊走を抑制すること、これがRac活性化の抑制を伴うこと、Racの抑制はRacGAPの促進を介することを見出した。細胞遊走を抑制するEDG5と細胞遊走を誘導するEDG1の間で、種々のキメラ受容体を、またEDG5のC末端欠失変異体を作製し、これらの各受容体の細胞運動調節能、RhoファミリーG蛋白活性調節能を解析した。この結果、細胞運動およびRacの抑制はEDG5の細胞内C末端領域と第3細胞内ループが、Rhoの活性化にはEDG5のC末端、およびこれよりN末端が関わっていることが明らかになった。 2.EDG5,EDG3,EDG1による血管細胞の機能制御 EDG5は血管平滑筋の化学遊走を抑制し、これはRacの抑制を伴った。EDG1,EDG3は血管内皮の化学遊走を促進し、このプロセスはRacに依存した。EDG1,EdG3は三次元ゲル内で毛様血管様の管腔構造形成を誘導し、このプロセスもRacに依存した。血管平滑筋において、EDGは増殖因子PDGF-B鎖の遺伝子発現を誘導した。 3.EDG5のノックアウトマウス キメラマウスの作製を経て、生殖系列細胞に変異の導入されたヘテロマウスを樹立する段階にある。 4.スフィンゴシンキナーゼノックアウトマウス ターゲティングベクターの構築を完了した。 1.単食性ショウジョウバエD.sechelliaのホスト植物中の有毒成分に対する胚の剛性に卵核膜が重要であること、また、産卵の遅延による卵胎生化も寄与することが判明した。 2,キイロショウジョウバエおよび近縁種のアミラーゼ遺伝子の変異をDNAレベルで調べた結果、自然選択が働いた証拠が得られた。 3.野外集団由来のオナジショウジョウバエ雌のキイロショウジョウバエおよびD.teissier雄との交配率を調べた結果、後者で交雑率の高い系統が得られた。 4.雄の交尾活動の光依存性に変化をもたらす突然変異に、網膜で発現する細胞接着分子chaoptinが関与することがわかった。 5.同所的に分布するD.ananassaeとD.pallidaosaの求愛歌の分析の結果、パルス間間隔(IPI)に差は見られず、2種間の種認識にIPIは関わっていないと結論された。 6.カザリショウジョウバエの黒色、褐色系統間に見られる交尾選択に、温度適応および近縁種との出会いが関係する可能性を検討したが、支持する結果は得られなかった。 7.アナナスショウジョウバエ類3種で発見された単為生殖は、すべて第2染色体左腕の同位置にある遺伝子によるもので、2倍体化はpronuclear duplicationによることが細胞学及び遺伝学的に示唆された。 8.膜翅目昆虫の未受精卵への異種精子注入により雑種胚が形成されることを確認したが、成虫に達したものはながった。一方、同属異種間の卵巣移植により異種卵黄タンパクのみで卵成熟が起こり、人為的に単為発生させると成虫にまで育つことを確認した。 9.雌の貯精嚢で貯精される精子の形成に必要な遺伝子の同定を試み、貯精されるが不妊となる突然変異を8系統確立した。そのうち、卵への進入が不能なものと精子核が膨潤しないものについて細胞学的観察と遺伝子座の決定を行なった。
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